No.73 2024年11月3日
「聖餐式再開~対話を重ね、知恵を求めて~」
牧師 木村拓己
「動かされないようにしっかり立ち、主の業に常に励みなさい。主に結ばれているならば自分たちの苦労が無駄にならないことを、あなたがたは知っているはずです。」
(コリントの信徒への手紙一
一五章五八節)
二〇二四年一〇月六日、世界聖餐日・世界宣教の日に聖餐式が再開されました。実に二〇二〇年二月以来の聖餐式でした。新型コロナウイルス感染症に対する懸念は、現在もなくなったわけではありませんが、再開の時を迎えたことをうれしく思います。
この四年半超の期間、役員会では真摯に礼拝のあり方に向き合い、決して少なくない時間をかけて審議を重ねてきました。礼拝式順の短縮、黙想の導入、聖餐式の休止、聖歌隊奉唱の休止と有志による奉唱の実施、交わりの会や愛餐会の休止、検温・手指消毒・マスク着用のお願い、オンライン礼拝の検討、クリスマスメッセージと奉唱の配信…。
教会に連なるお一人おひとりに葛藤があり、礼拝出席を控える方の姿も見られました。互いの声に耳を傾け、共に考えるために各会への聞き取りを行い、アンケート実施を重ねました。原宿教会の礼拝を絶やさず続けていくために、最善を尽くしてきたのです。
今回、聖餐式再開の決断に至った要因として、四つの陪餐方法を定義づけたことが挙げられます。すなわち、①パンとぶどうジュースに与る、②個包装のパンとぶどうジュースに与る、③個包装のパンとぶどうジュースを持ち帰る、④心の中で与る、というものでした。
役員会の審議の中で、「世の中には誤嚥の恐れから物理的に食べることが難しい方がいる」という意見を受けて、同じ時・同じ場所で口に含むことを聖餐式に求めるのではなく、主が招かれる食卓を共に囲むところに聖餐式の意義を見出したのでした。
この間、多くの教会員の方々から聖餐式再開の要望が聞かれました。役員会では、「聖餐式の再開を待ち望みながら、天に召される方も今後出てくるかもしれない」ことを念頭に置いて、集中的に審議を重ねてきたつもりです。改めて気付かされたことは、教会に集う方々は、必ずしも一定の健康が守られ、今後も礼拝出席の見通しがあるわけではないということでした。
私たちの教会には、多様な背景や考えを持った方々が集っています。一人では到達できなかったであろう地点、自分の考えでは見ることができなかったであろう景色に出会えることがあります。今回の聖餐式の再開は、まさに私にとって多くの示唆が与えられた豊かな時であったと振り返っています。
今後も教会に連なる方々と分かち合い、対話を重ねながら、原宿教会の礼拝、また宣教とを考えていきたいと思います。
去る九月に開催された特別伝道礼拝・集会も、こうした流れの中で「礼拝の豊かさを求めて」というテーマが与えられました。詳細は、別報をご覧いただければと思います。
私たち一人ひとりが主の枝であり、主の業に励むことへと招かれていることを確かめつつ、これからも主の助けを得て、私たちの原宿教会をつくり上げる働きへの参与を願っています。